地方の花屋がセレモニーホールに営業をかける方法

はじめに:花屋が式典の“パートナー”になるための第一歩

冠婚葬祭などの式典に欠かせない存在である花屋。しかし、地方においてはセレモニーホールとの関係構築ができず、業務用受注の機会を逃しているケースも少なくありません。セレモニーホールと継続的に取引できれば、安定した受注と信頼関係の構築が見込めるため、営業先としては非常に魅力的です。

一方で、どのようにアプローチすれば良いのか分からず、実際の営業に踏み出せない花屋も多いのが現実です。本記事では、地方の花屋がセレモニーホールに営業をかけ、取引をスタートさせるための具体的な方法と心得を、実践的な視点から丁寧に解説していきます。

1. なぜセレモニーホールとの取引が重要なのか?

セレモニーホールとの継続的な取引には、以下のような多くのメリットがあります。

安定した収益源となる

通年で一定の需要がある葬儀や法要の場では、繁忙期・閑散期の波が少なく、年間を通じて安定した注文が見込めます。特に地方では、地元のセレモニーホールと信頼関係が築ければ、定期的な受注が発生しやすくなります。

高単価で効率的な販売が可能

一般の小売販売とは異なり、供花やスタンド花、装飾アレンジは1件あたりの単価が1万円以上と高額になるケースも多く、1回の納品で売上が大きくなるのが特徴です。さらにまとめて複数注文が入るため、効率的に売上を作ることができます。

地域での信頼構築と口コミ効果

セレモニーホールと取引している花屋というだけで、「信頼できる店」「プロフェッショナルな対応ができる店」という印象を持ってもらえるようになります。実際に利用された遺族や参列者の口コミによって、地元での知名度や評価が上がることもあります。

2. 営業準備:自店の強みを整理する

営業前には、セレモニーホールが求めるポイントに対して、自店がどう応えられるのかを整理し、明文化しておくことが大切です。

アピールポイントの具体化

  • 式典用の花をこれまでにどれだけ扱ってきたか(実績)
  • 急な依頼への対応経験(納期の柔軟さ)
  • 葬儀に適した花材の知識や選定力
  • 花だけでなく札書きや装飾全体への提案が可能か

パンフレット・営業資料の準備

A4サイズ1〜2枚に、自店のサービス内容・実績・価格帯・営業時間・納品可能エリア・連絡先を簡潔にまとめた営業資料を作成しましょう。写真入りのミニカタログ形式にすると説得力が増します。

3. 営業方法①:飛び込み営業の進め方

事前リサーチは必須

まずはターゲットとなるセレモニーホールを調べましょう。大手チェーンか個人経営か、地域内での知名度、現在の提携花屋があるかどうかなど、可能な限り情報を集めておくことで、営業時の会話の質が上がります。

飛び込み営業の基本姿勢

  • 第一印象を大切に:清潔感のある服装、丁寧な言葉遣い
  • 名刺と花のサンプルを持参:小型のアレンジやミニブーケなど
  • 応対スタッフには礼儀正しく、受付から信頼を得る

会話のポイント

  • 「近隣で花屋を営んでおり、ぜひお力添えさせていただきたくご挨拶に伺いました」
  • 「急なご依頼にも即時対応できます」
  • 「簡単な試作も無料でお届けできます」など、負担のない形で始められることを伝えましょう。

4. 営業方法②:紹介ルートの活用

セレモニーホールは外部業者の選定に慎重な傾向があるため、信頼できる人物・団体からの紹介が非常に効果的です。

紹介を得やすいルート

  • 取引のある仕出し業者や仏壇店
  • 商工会、町内会、寺社仏閣の関係者
  • 地域の行政や観光協会(まちづくり活動に参加している場合)
  • 葬儀を経験した顧客からの「遺族の声」

紹介時は、「〇〇様よりご紹介いただきまして…」と前置きをすることで、営業のハードルが大きく下がります。

5. 営業後:信頼を積み重ねる対応術

最初の訪問や挨拶だけで即契約となることは稀です。むしろ、その後のやり取りや対応が、信頼構築の肝になります。

試験対応を全力で行う

1件のスポット依頼でも、「早い・丁寧・間違いがない」対応をすることで、ホール内の評価が高まります。翌日に電話で「昨日はありがとうございました」とフォロー連絡を入れるのも効果的です。

細部まで丁寧に

  • 請求書や納品書の記載ミスを防ぐ
  • ホール内での搬入動線や騒音に配慮
  • 担当者の名前は記録し、次回の訪問で呼びかける

「いつも静かに設営してくれて助かる」「安心して任せられる」と思ってもらえることが継続的な取引の第一歩です。

6. 取引成立のための「提案力」

他社との差別化を図るには、「ただ花を納品する」のではなく、ホールや遺族にとってプラスとなる提案を行いましょう。

例:付加価値を生む提案

  • 「いちばん」筆耕システムを使った名札や芳名板の印字サービス連携
  • 供花+感謝状、供花+思い出パネルのセット商品提案
  • 小規模会場向けの「1式一括装飾パック」プラン作成

「この花屋と組むと、現場が楽になる」「追加提案までしてくれる」と思ってもらえれば、価格以上の価値を感じてもらえるようになります。

結論:信頼をつくり、地元の“式典パートナー”になる

セレモニーホールへの営業は、単なる販売活動ではなく、“大切な式典を共につくる仲間になる”ことを目指すものです。

売上や効率だけでなく、「この花屋にお願いすれば安心」「何かあってもすぐ動いてくれる」と感じてもらえるような誠実な姿勢が、長期的な関係につながります。

地元で生まれた信頼は、地域内でのさらなる紹介や連携にも発展していきます。花の力で、地域のセレモニーをより豊かに彩りましょう。

Q&A:セレモニーホールへの営業でよくある質問

一度断られたホールに再訪しても良い?

はい、断られた理由が「既に取引先がある」などであっても、数か月後に担当者が変わっていたり、新しい式場ができたりと状況は変化します。礼儀をもって季節のあいさつやサンプル配布などで再訪すると、好印象を与えることができます。

式典の知識がないのですが、大丈夫?

最初は基本的なマナーや葬儀の流れを学ぶだけでも十分です。現場の様子を見学したり、式場スタッフに質問したりすることで徐々に知識が深まります。

花の単価が安くて利益が出ないのでは?

たしかに一部の供花は単価が抑えられがちですが、数量がまとまることで利益は確保しやすくなります。また、「名札」「装飾」「パネル」などのオプション提案を加えることで、1件あたりの売上単価を上げることが可能です。